昭和二年(一九二七年)生まれの私は、戦後に旧制末期の東京大学で文学部社会学科を卒業するや研究室に残り、以後今日まで一貫して大学人として人生を歩んできた。しかも還暦前から古希にいたる十数年間には、二つの大学の設立に深くかかわり、しかも開学後はいずれも初代学長までつとめた。だが、経歴書に必ずこう記されている自分の過去を振り返ってみるとき、私はいつも心の中で反論したくなる。記述されていることは全て事実ではあるにせよ、私の人生の実相を伝えるにしては、余りにも誤解を招きやすい…と。